京つう

歴史・文化・祭り  |洛中

新規登録ログインヘルプ


2011年08月10日

仁丹町名表示板 公称と通称


何千枚と設置されたであろう京都の仁丹町名表示板。
はたして、京都市などの行政の許可が必要だったのかどうか、そこまでは行かなくても何らかの介入や監督があったのかどうか、今のところ全くの不明です。

しかしながら、公称の住所表示を非常に尊重しているということが表示板を見ていて窺えるのです。

原則としてほとんどすべて公称どおりの表示がされているのですが、中には地元の要望を聞き入れたとしか考えられないケースが散見されます。
このような場合でも、公称部分は大文字で、通称部分は小文字もしくは括弧書きでと明確に書き分けているのです。
このあたり、行政の目を気にしていたとも、はたまた約束事があったとも考えられますね。

「基礎講座 3.表記方法」の最後は、このように公称と通称を書き分けているパターンを紹介します。

先ずは、今は北区に所属する紫野柏野地区です。
上柏野、中柏野、下柏野の各町ともすべて自治会名らしきものが、小さな文字で付加されているのです。


他にも上柏野町西町、上柏野町中町、中柏野町寿町、中柏野町西町なども確認されています。

また、東山区の轆轤(ろくろ)町にはカッコ書きで「樋口小路」なる通り名も記されています。
まだ確かめてはいないのですが、おそらくは地元では通じる通称なのでしょう。



そして、極め付けは上京区の相国寺門前町です。



烏丸今出川の北東の一画にあるエリアですが、ご存知のとおり広大な同志社大学と相国寺がそこにはあります。
それらの北側や東側のエリアを表現したいのですが、あいにく有名な通りが貫いていません。
だから、例えば「今出川通烏丸東入上る東入下る」だとか、「烏丸通寺之内上る東入1筋目上る東入」などなど、ジグザグに誘導するという非常に難解な表現となってしまう場合が多いのです。

そこで、仁丹町名表示板は開き直ったのか地元の要請を受けたのか、通り名を抜かしてズバリ”町名だけ仕様”にしてしまったのです。
公称では通り名をつけなければならない上京区にあって、極めてイレギュラーな表記となりました。

しかし、ここでも注目すべきはあくまでも公称を尊重しているということなのです。
公称町名はあくまでも「相国寺門前町」ですから、その6文字は大文字で書き、通称である“北”や自治会名と思しき“宮本”は小文字で描いているのです。
ちなみに、「相国寺東門前町 北ノ部」なる表示板も確認されています。この場合も、”東”と”北ノ部”は小文字です。

このように、例え地元の要望を聞き入れたとしても、あくまでも公称を尊重する姿勢が貫かれているのです。
この精神は平成の復活仁丹においても肝に銘じておかなければ、先人の苦労に背くことになります。


ところで、以上のような見解に都合が悪い表示板が1種類だけ実はあるのです。
それは、「右京区 秋街道町 区域」です。



ルールに則れば、区域は小文字にするべきなのですが、堂々と大文字で書かれています。


以上、基礎講座3は、京都における仁丹町名表示板の表記方法のみに的を絞って解説してみました。
次なる基礎講座は、そもそもの京都独特の公称表示について少し説明させていただきます。

  


Posted by 京都仁丹樂會 at 06:00Comments(2)表記方法

2011年08月09日

仁丹町名表示板 伏見仕様



いささか番外編かもしれませんが、「伏見仕様」としました。
現在の伏見区のことですが、行政区名の欄が『伏見市』と右横書きとなっています。

伏見市が存在したのは昭和4年5月1日~昭和6年3月31日のわずか1年と11ヶ月。
ということは、町名表示板もこの期間に設置されたことになります。

基礎講座 二.実例 ⑤伏見市の場合 と内容が重複しますが、とにかく非常に興味深いところは、表示板の長さが短いだけでデザインは京都市の「町名だけ仕様」と同じだということです。
だから、「伏見仕様」として仲間に入れてみました。

           京都市の町名だけ仕様         伏見仕様


なぜ、京都市と同様のデザインとなったのか?
これ以上は、推理の世界になりますので、ここでは割愛します。
みなさんのお考えをコメントとして寄せていただければ嬉しく思います。

書式は次のとおりです。

【伏見仕様】 伏見市 + 町名 + 商標

表示板の大きさは、縦が京都市の約2/3の60cm、横が京都市よりも3cm程度小さい12cmで、実は奈良市と同じ大きさのようです。
ただ、奈良のように商品ロゴはありませんので、シンプルで美しい仕上がりとなっています。
  


Posted by 京都仁丹樂會 at 06:00Comments(1)表記方法

2011年08月08日

仁丹町名表示板 木製仕様



京都における仁丹町名表示板、琺瑯製になる前は木製でした。
どこにも記録はないのですが、木製のが存在している以上、そう考えなくてはならないでしょう。
今も10枚程度が現役で残っています。
森下仁丹が町名表示の事業を開始したとされる明治末期、もしくは大正初期のものなのでしょう。



木製がゆえ良好な状態で残っているとは言えませんし、数も少ないのですが、それでも次のようなことはどうやら言えそうです。

大きさはおよそ横18cm、縦91cmと琺瑯製よりも横幅がやや大きいです。
そして、表示板全体に枠を付けて、正真正銘、額縁構造となっており、その額縁部分は赤く塗られていたようです。

表記は、白地に黒の文字、商標は上に位置していて”ビスマルク”の胴体部分は赤色です。

住所の表示方法については、行政区名がないのが一般的でしたが、2011年に北区の紫野上柏野町で”上京区”なる行政区名が入ったものが出現しましたので、一部では行政区名が記載されたようです。
そして、通り名が縦2行で描かれますが、そのうち1本目の通り名は2本目よりも大きな文字で書かれているものが多いようです。
それから、ようやく町名が来ますが、これが大きく堂々と書かれています。
通り名よりも町名を優先していたことが明らかですね。

以上のとおり、琺瑯製と木製とでは表示に関するスタンスが違っていたと考えられます。
とりわけ、通り名と町名のどちらを優先するかは180度転換したことになります。

また、商標の下に通り名の一部をローマ字で表記しているものや、方向を示す指先マークを描かいているものも見られます。



このあたり、表記方法がまだ定着していないようで試行錯誤をしていたことが窺えます。

フォーマットは次のとおりです。

【木製仕様】 商標+(オプション)+(通り名縦2行)+町名


--------------------------------------------------------------------------------------


※ この記事は2011年8月8日にアップしましたが、2012年4月9日一部訂正を加えました。
  詳しくはコメントをご覧ください。
  


Posted by 京都仁丹樂會 at 06:00Comments(1)表記方法

2011年08月07日

仁丹町名表示板 復活仕様



平成22年のプロジェクトにより復活した表示板の仕様です。

これは「標準仕様(下仁丹)」や「併記仕様」を今風に改めたものです。
つまり、行政区名は左から右への左横書き、「區」ではなく「区」であり、送り仮名も「上ル」「下ル」ではなく「上る」「下る」です。


ちなみに、「中京区」の表示は京都の仁丹町名表示板の長い歴史において初登場です。



仁丹ファンのみなさんの中には、やっぱり右横書きの「區」と「上ル」「下ル」でないとというご意見もあるでしょうが、やはりここはノスタルジーの”復刻”ではなく、あくまでも”復活”なのですから今様でないといけないでしょう。

商標も今現在使われているものが採用されています。

これらの特徴で、復活バージョンかオリジナルバージョンかを見分けることもできますね。

          復活バージョンの商標          オリジナルバージョンの商標


書式は次のようになります。

【復活仕様】 行政区(左横書き)+通り名1+通り名2+方向+現商標
         行政区(左横書き)+町名+現商標
         行政区(左横書き)+町名+通り名1+通り名2+方向+現商標

ただし、「町名のみ仕様」はまだ登場していませんが、今後のプロジェクトの進み方では当然誕生するはずです。

                    復 活 仕 様 の 例

  


Posted by 京都仁丹樂會 at 06:00Comments(2)表記方法

2011年08月06日

仁丹町名表示板 併記仕様



これは壬生や西ノ京に多い例ですが、行政上の公称表示としては町名だけを使うエリアではあるものの、以前から名の通った東西南北の通り名がいくつかあって、場所によっては通り名でも表現できることもあります。

そのような場合は、町名と通り名の両方を併記しているケースも見受けられるのです。
ただし、あくまでも公称表示は町名のみです。
だから、町名を優先して大きく太く描いた後、その下に遠慮がちに通り名を小さく併記しているのです。

おそらく地元からの要望を受け入れたのでしょう。

各基礎講座のトップ記事は、極力想像を廃し、事実のみ伝えることに努めていますが、ここだけは”地元の要望”という推理を加えずにはおられません。

これを「併記仕様」とすると、全体の約6%です。

書式は、次のとおり。

【併記仕様】 行政区名+町名+通り名1+通り名2+方向+商標

行政の目と地元の要望の板ばさみ、いやいや両立させた産物なのでしょう。

通り名併記仕様の例
  


Posted by 京都仁丹樂會 at 06:00Comments(0)表記方法

2011年08月05日

仁丹町名表示板 町名だけ仕様


周辺区では、通りが中心区のように碁盤の目になっていないので、通り名の組み合わせ、すなわち座標による位置指定が困難もしくは不可能となって、住所表示は他都市と同様に町名だけとなります。
ですから、数文字で表現できるのです。

でも、仁丹の町名表示板は都市単位で大きさもデザインも統一されていますから、縦91cm横15cmという大きなキャンパスに町名のみの数文字が描かれるわけです。
だから太くて大きな文字になり、中には非常に力強いタッチも見られます。

これを「町名だけ仕様」とすると、全体の16%を占めます。

ただ、行政区名は標準仕様に倣って小さく右横書きをしているのが一般的ではありますが、極々一部では行政区名も縦書きで堂々と描かれているものもあります。
キャンパスの余裕がたっぷりなのだから、型にはまらず目いっぱい書けばいいじゃないかとなったのでしょう。

書式は、行政区名が右横書きのものを「町名だけ仕様(横)」、縦書きのものを「町名だけ仕様(縦)」とし、次のようになります。

【町名だけ仕様(横)】 行政区名(小文字横書)+町名+商標

【町名だけ仕様(縦)】 行政区名(大文字縦書)+町名+商標


           町名だけ仕様(横)                       町名だけ仕様(縦)


  


Posted by 京都仁丹樂會 at 06:41Comments(0)表記方法

2011年08月04日

仁丹町名表示板 標準仕様




数の上からも約77%を占めるので「標準仕様」と言わざるを得ないのが、中心区に見られる通り名を組み合わせたタイプです。公称とも合致します。

ただし、仁丹の商標が上に付いているタイプと下に付いているタイプがあるのです。謎です。
大阪の赤仁丹、黒仁丹にならって、商標が上にあるのを標準仕様(上仁丹)、下にあるのを標準仕様(下仁丹)とここでは呼ぶことにします。
書式は次のとおりです。

【標準仕様(上仁丹)】  商標+行政区名+通り名1+通り名2+方向+町名

【標準仕様(下仁丹)】  行政区名+通り名1+通り名2+方向+町名+商標


標準仕様(上仁丹)の例
  


標準仕様(下仁丹)の例
 


行政区名は右から左へと書き進む右横書きです。
横幅15cmのスペースですから小さな文字で描かれます。
また、区なる文字は旧字体の「區」が使われていますが、他の文字にしても基本的に旧字体が使われています。

続いて、太く大きな文字で2本の通り名の組み合わせと上ル下ルなどの方向の指示、そして再び小さな文字となって町名が続きます。
京都の中心区ではれっきとした町名があるにも関わらず、それを使わずに通り名だけで場所を表わす習慣があります。それだけで用が足りるのです。
標準仕様はこのような日頃の市民の慣わしに軸足を置いていることが分かります。
でも、町名も記すことで公称は無視していないのです。

ちなみに、レアケースですが、難読の通り名や町名にルビが入ることや長い町名が縦2行になることもあります。

この住所表示の部分は、黒のペンキによる手書きです。
1枚1枚職人さんが書かれたのでしょう。
達筆ですが、個性もあり、その筆跡の違いから製造ロットを探ろうと言う試みもできそうです。

色彩は白地に黒の文字とし、周囲を濃紺の太いラインで縁取り、商標はビスマルクの胴体部分に赤が入ります。
駅名やその他様々な琺瑯製表示板は、紺地に白文字が一般的だった当時としては、落ち着いた中にもキラリと輝くセンスが見られます。

以上が標準仕様であり、極々一部の例外を除き、公称表示と100%合致している仕様です。

なお、商標が上に付いている標準仕様(上仁丹)は全体の約21%で旧上京区管内でしか見ることができません。
その理由は分かっていません。永遠の謎なのです。
様々な推理をコメントとして寄せていただきたいと思います。

※割合について※
割合を示す%の数値は、とりあえず集計の終わっている約750の個体を母数にしています。
割合ですから、今後もあまり変わらないとは思いますが、京都仁丹樂會では約1400の個体について分類および集計作業を現在進めています。
結果が出ましたらまた報告させていただきます。

※旧上京区管内とは※
昭和4年4月1日に中京区が誕生するまでは、ほぼ三条通を境にして北側が上京区、南側が下京区であり、これら2つの区しかありませんでした。  


Posted by 京都仁丹樂會 at 06:09Comments(1)表記方法

2011年08月03日

仁丹町名表示板 表記方法の分類


 
京都において、仁丹町名表示板が多く残るのは中心区です。
かつての市電外周線の内側といったところで、ご存知のとおり、通り名を組み合わせて座標で場所を指し示すエリアです。
他都市ならば多くて数文字で済む住所表示が、このエリアでは軽く15文字前後、中には20字に達するような組み合わせもあります。
だからこそ、京都の仁丹町名表示板の大きさは特別扱いで縦がおよそ91cmにも及ぶわけです。

一方、周辺区では他都市と変わらない住所表示ですが、表示板は統一されていて同じ大きさのものが使われています。

さて、これら様々な住所表示をおよそ縦91cm×横15cmのキャンバスにいかに納めているのでしょうか?
基礎講座第3章では、その表記方法に関する考察をしていきます。

ざっと次の5種類に分類することができます。

1.標準仕様(上型・下型)
2.町名だけ仕様
3.通り名併記仕様
4.復活仕様
5.木製仕様
6.伏見仕様




それぞれの詳しい解説を順次続けさせていただきます。
  


Posted by 京都仁丹樂會 at 21:48Comments(0)表記方法