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2012年01月08日

仁丹町名表示板 基礎講座・第五章 ~分布状況~

仁丹町名表示板 基礎講座・第五章 ~分布状況~

第五章 「仁丹町名表示板」の設置範囲

<2> 仁丹町名表示板の分布状況

 まず、「仁丹町名表示板」の設置範囲を調べるとしても、お話した様に、森下仁丹本社の設置施工当時の資料は戦災で失われてしまいました。これで、手早く確実にそれを知ることはできなくなってしまいました。そこで、別の方法で設置範囲の解明を試みてみましょう。その方法として、現存する、もしくは消滅したものの実在確認ができていた仁丹町名表示板の設置位置を集計し、その最も外周に位置する仁丹町名表示板の設置位置を検証することで、設置範囲を推測するというものです。これは、途方も無い時間と手間のかかる方法なのですが、われわれ京都仁丹樂會メンバーが、すでに何年もかかって積み重ねてきたデータをすり合わせれば、ある程度の短時日で、ほぼ実態に近いものが見えてくるのではないかと考えました。
 では、樂會独自に設置事実を確認・把握していた実数を見てみることにしましょう。まず、現在の行政区に置き換えて、実在していた確認枚数とその割合を表とグラフにまとめてみました。

仁丹町名表示板 基礎講座・第五章 ~分布状況~
<平成23年12月現在>

※「実在確認」とは、”現存”仁丹町名表示板、および”現在は消滅・埋蔵”したものの実在確認ができている仁丹町名表示板のこと。

 この表は、平成8年以前から現存調査を始めていた資料を平成8年8月の時点で一旦集計し、さらに平成23年12月までの15年間の継続調査のデータを加え、修正してまとめたものになっています。
 この数値は、樂會メンバーが実際に仁丹町名表示板(確認できた埋蔵仁丹も含む)を実見確認したもののみを集計したものです。しかし、あくまでもデータ集計途上の数値ですので、仁丹町名表示板の設置規模の全容を示すものではありません。また、同種の研究調査を重ねておられる方々の情報や古写真や各メディアで散見する仁丹町名表示板に加え、これからも発見するであろう埋蔵仁丹を拾い集めれば、さらに大きな数値になってくることが考えられます。

※「埋蔵仁丹」とは、町家壁面などの屋外から取り外されて屋内にて保存されたり、コレクションとして所蔵され、町名表示板として活用されていない仁丹町名表示板のこと。



仁丹町名表示板 基礎講座・第五章 ~分布状況~
 これは、上記表の実在確認枚数を円グラフにまとめたものです。
 枚数の構成比率は、京都中心の上・中・下京区の三区で、おおよそ8割を占めていることがわかります。設置された当初においても、中心区の設置割合はこの結果以上であることが考えられます。つまり、四ツ辻ごとに最大8枚の仁丹町名表示板が設置され、その密度の高さは、現在の比ではなかったと容易に想像がつくからです。


 では、現在の上京区・中京区・下京区を取り巻く周辺区ではどのような状況だったのでしょうか。現在確認ができる仁丹町名表示板で、最も大外回りとなる最東端、最西端、最北端、最南端の看板を見てみましょう。


  最東端      西 端     突出最西端    最北端       南 端     突出最南端
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・最東端    「左京區上髙野口小森町」
・西  端    「右京區花園八ッ口町」(消滅)
・突出最西端 「右京區秋街道町区域」 ※嵯峨野秋街道町
・最北端    「左京區上髙野大橋町」
・南  端    「下京區東九條札ノ辻町」(消滅)
・突出最南端 「下京區本町十九町目 本町通東福寺南門下ル」
         ※埋蔵仁丹として、「下京區本町二十二丁目」の実在は確認済み。

 上記に挙げた例の様に、周辺地区においてもまだまだ数多くの仁丹町名表示板たちが頑張ってくれています。しかし、その設置密度については、中心区と比べうる程のものではなかったようです。それは、家屋の取り壊しや撤去によって減ってしまったというよりも、設置当時の周辺エリアにおいては、一面にのどかな田園地帯が広がり、飛び石状に集落が点在していました。今でこそ家々が立ち並んで市街地となっていますが、その環境の中で設置可能な場所となると、村々の集落内や街道沿いに建物が連なっているルート、或いは、交通の要衝や神社仏閣の参拝路となっていた地点であるということになってきます。要するに、人の行き来がある場所ということの様です。
 仁丹町名表示板が広告であるということを考えれば、ごく自然な結果だと考えられます。この6枚も、やはりその例に漏れず街道沿いもしくは集落内に設置されています。





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Posted by 京都仁丹樂會 at 18:45│Comments(0)設置範囲
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