毎日新聞 京都仁丹物語 5

京都仁丹樂會

2015年06月22日 21:35

京都仁丹物語 5
(毎日新聞 2015.6.20 朝刊 京都面)


5月30日から連載開始となった、毎日新聞の『京都仁丹物語』もいよいよ5回目となりました。今後、毎回、コラボ記事としてその内容を紹介していこうと思います。


今回のテーマは、
書き手に拍手 最多20字
大胆な字、大阪職人か

手書きの文字に着目したテーマです。

私たちが今までに確認した仁丹町名表示板のうち、最も字数の多い物ということで次の仁丹が紹介されました。



上京区寺町通今出川上ル西入三筋目上ル上塔之段町


まさに行政区以下20字です。バランス良くきっちりと収まっています。おそらく現場で書いたであろうと推測している京都の仁丹町名表示板、ぶっつけ本番でお見事!書き手に拍手!と言う訳です。

この長い長い住所表示の意味するところは、翻訳すると次のようになります。

寺町通を歩き、今出川通との交差点のひとつ北に、西へ入る通りがあるから、そこを入ってそのまま西へ向かう。そして、北へ向かう3本目の通りを今度は右に(北に)入ったら、そこが目的地だよ。

という訳です。京都の碁盤の目のような通りにはそれぞれ通り名が付いていますが、中には名前のない細い通りもあります。そのような時に今回のように先ずは“寺町通今出川上る”という大きなポイントを示し、そこからさらに“西入三筋目上る”と細やかに誘導するのです。

※     ※     ※

一方、最小の文字数は行政区以下4文字で、吉田橘町、八條源町、吉田本町などがあり、代表して吉田橘町が紹介されています。ただし、旧伏見市バージョンを除く、横14.5cm縦90.5cmというキャンバスに限定してのことです。



こうして3枚並べて眺めると、吉田本町は上品なほっそりした文字ですが、吉田橘町と八條源町は太く非常に力強く書かれていることがよく分かります。筆の太さが違うだけでなく、筆跡が微妙に違うようなのでもしかしたら書き手自体が違うのかもしれませんね。

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この手書き文字について同業者はどのように見るのだろうかと、毎日新聞の記者さんは有限会社八田看板さんを取材しておられます。京都府の現代の名工にも選ばれ、平成の復活仁丹第1号を書かれたあの八田さんです。記事では、仁丹町名表示板に書かれた伸び伸びとした書き方は、長年の経験から「大胆な字を書く傾向がある大阪の職人の字ではないか」と推測されています。京都はきちんとした字を求められ、バランス良く割り付け、冒険的な字を書かない傾向があるのだそうです。森下仁丹は大阪が本拠地、さもありなんです。

バランスと言えば、なるほど、吉田橘町などは下の余白が大きすぎます。八條源町もそうですが、全体をもう少し下方にずらして書いたら綺麗なのにと思うと、事前の割り付けをしていないのではと見ることもできそうですね。

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ところで、今回の記事とは直接関連はないのですが、六条通界隈の仁丹町名表示板は若宮通付近から筆のタッチが変わります。若宮通の西側では上京区などでもよく見られるほっそり上品な文字、東側では文字がいきなり太くて力強くなるのです。ごらん ↓ のとおりです。左側から、西から東へと並べてみました。




また、こんなにバランスの悪いものもあります。



かなり無計画な字配りです。慣れていない職人さんが書いたのかもしれませんね。

※     ※     ※

さらに記事では、仁丹の商標の位置にも触れられています。上にあるタイプと下にあるタイプがあり、上タイプは特定の学区に集中していることも紹介されました。

これに関する詳細な説明は、当ブログの『永遠のテーマ 商標の上と下』(←リンクしています)をご覧いただければと思います。

以上、毎日新聞「仁丹物語5」の解説でした。


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