木屋町二条、島津資料館の「仁丹」復活!

京都仁丹樂會

2024年09月13日 18:06

木屋町通と二条通とが交わるT字路の光景は、誰しも好きなスポットではないでしょうか。


歩道はかつての京都電気鉄道の線路跡をなぞるように綺麗な曲線を描き、街路樹もあり、近くには高瀬川一之舟入もあって、歴史と文化の香りが漂っています。そのように感じさせる一番の要因は、「島津製作所 創業記念資料館」の素敵な建物の存在だと思います。


そして、そこには「琺瑯仁丹」がありました。



今は「中京区」だけども、設置された昭和3年当時は「上京区」でした。



ところが、昨年の年末、この「仁丹」が忽然と姿を消したのでした。


設置されていた跡がありありと残っています。今まで何度も味わった残念な光景です。


しまった!やられた!と思いました。
なぜなら、この界隈で貴重な看板が相次いで盗まれるという事件が続いていたからです。

先ずは2023年7月。
T字路のすぐ北側にある、貝葉(ばいよう)書院さんです。江戸時代から続く木版印刷の老舗ですが、130年間軒先に吊るされていた木製の看板が盗まれました。
続いて12月のこと、今度はT字路のすぐ西にある書道用品店 香雪軒(こうせつけん)さんです。こちらも江戸時代からの老舗で谷崎潤一郎や武者小路実篤も通っていたとか。ここでは、営業中のみ店先に吊り下げられていた筆の形をした木製看板が盗まれました。100年ほど前からある、顧客に親しまれていたものだそうです。

そして、次にこの仁丹町名表示板が消えたのです。
当然、盗難だと思い込み、愕然としました。

しかし、違いました。今回のケースは、傷みが進んだので美観上、取り外されたとのことで、同資料館内に保管されていたのです。そもそも半永久的な耐久性を持つ琺瑯看板ではありますが、どこかに外的な原因で傷が発生すると、そこから錆が広がるなどします。今回のケースでは5カ所ほどに大きな琺瑯の欠損があり、そのうちの一つなどは“髭のおじさま”の顔丸々に及んでいたのでした。


しかし、その後、森下仁丹さんとの話しが進み、新たに新調されることになったのです。
そして、2024年9月4日、設置の日を迎えました。

設置は、今や京都仁丹樂會“工務部”として欠かせない存在となった「てんとう虫」さんの手に拠ります。関係者の見守る中、元々あった場所に、その痕跡を隠すように美しく、手際よく設置されました。









こうして設置されたのが、この新製仁丹町名表示板です。
美しく、景色の中にしっくりと溶け込みました。



平成から始まったいわゆる“復活バージョン”は、現状に合致する表記方法で製作されてきました。ですから、今回は左横書きで『中京区』、そして『木屋町通二条下る西生洲町』となるものと思っていたのですが、表記は従来のままでした。レプリカという位置付けで製作されたからです。

と言うのも、この資料館の建物は国の登録有形文化財となっていることから、外観をそのまま維持しなければならないという制約があり、レプリカという発想になったそうです。また、昭和3年頃設置の元々あった仁丹町名表示板は、登録有形文化財の家屋に付随していた一部分として、今後は文化財のひとつとして同館で保管されるそうです。

ともあれ、以上のような経過を辿って、「仁丹のある風景」が戻って来たことは嬉しいことでした。

~京都仁丹樂會~

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