様々なバリエーション

京都仁丹樂會

2011年08月14日 09:46


前回の基礎講座では、中心区の住所の公称表示は次の公式によることを説明しました。

公式
京都市 + <行政区名> + <通り名1> + <通り名2> + <方向>
                  + <オプション> + <町名> + <地番>

しかしながら、随所にいささかイレギュラーな表現が入ることもあるのです。
今回はそれらを紹介させていただきます。

御前通
公式で言うところの<通り名2>では“通”なる文字を付けないと説明しましたが、「御前通」だけは例外で、<通り名1><通り名2>どちらの位置にあっても“通”を付けて「御前通」なのです。
京都市上京区 今小路通 御前通 東入 真盛町
京都市上京区 仁和寺街道 御前通 西入 下横町
なぜなのか今のところ理由が分かっていません。
でも、仁丹町名表示板もこのルールをひたすら守っています。


ちなみに、御前通以外にもこのような例が仁丹では確認されているのですが、当時の公称に従っているのか、それとも書き手のミスなのか今後の調査によることになるでしょう。


京都の町を南北に貫くのは何も道路だけではありません。川もです。
加茂川や白川などが通り名と同じように使われている公称表示もあります。
ただし、「加茂川筋」とか「白川筋」と“通”ではなく“筋”なる漢字が使われており、<通り名1>でも<通り名2>でも“筋”なる文字は省かれることはありません。
京都市下京区 上ノ口通 加茂川筋 西入 菊屋町
京都市東山区 白川筋 三条 下る 2丁目 唐戸鼻町

の間
無名の通りを表現する工夫も見られます。
京都市上京区 室町新町の間 一条下る 一松町
京都市中京区 新町西洞院の間 四条上る 郭巨山町
前者の“室町新町の間”とは室町通と新町通の間にある、それらと並行した無名の通りという意味です。
同様に、後者の“新町西洞院の間”は新町通と西洞院通の間にある通りのことです。
ただ、前者の“室町新町の間”は衣棚通という名称がいつからか付けられており、実は
京都市上京区 衣棚通 一条下る 一松町
なる表現も存在しているのです。
「京都市上京区室町新町の間一条下る一松町」と「京都市上京区衣棚通一条下る一松町」が同じ場所を指しているとは、京都の人でないとなかなか理解し難いでしょうね。


有名な通りに並行する無名の通りを表現する方法として、次のような例もあります。
京都市上京区 芦山寺通北裏 大宮西入 社横町
京都市東山区 三条通南裏2筋目 白川筋 西入 堤町
前者は芦山寺通の1本北側を並行する通り、後者は三条通の2本南側を並行する通りという意味です。
とりわけ後者は白川筋との組み合わせで興味深い表現です。
仁丹にもありました。



ランドマーク
〇〇通△△という<通り名1><通り名2>の組み合わせで交差点を指示するということは、すなわち特定のポイントを指し示すことです。
そこで、有名なランドマークがあればそれ自体で特定のポイントを表わすことにもなり、次のような例も出てきます。
京都市上京区 大宮通西裏 今宮御旅所 下る 西若宮北半町
大宮通の1本西側の南北の通りで、今宮神社の御旅所を下るという指示です。
現在の地図では御旅所の境内が大宮通で途切れているのでちょっと分かり難いですね。
昭和初期の地図を確認する必要がありそうです。
京都市東山区 三条通 大橋 東入 2丁目 若竹町
これは三条大橋を東へ進んで2本目の通り近辺という意味です。
京都市東山区 八坂鳥居前 東入 円山町
こうなると東西南北の通り名は一切無視、ずばり八坂神社の鳥居の前から東へということです。石段下(四条通のどんつき)のことではなくて、境内の南側にある鳥居のことです。

京都御苑
すべて通り名の組み合わせで表現する上京区にあって、唯一の例外が「京都御苑」なる町名です。すなわち御所です。通り名は一切使わずに
京都市上京区 京都御苑 ***番地
となります。
しかしながら、さすがに仁丹が存在したという情報はありませんし、これからもないのじゃないでしょうか。

以上、イレギュラーな公称表示としての代表格を紹介しました。
しかし、こうして見てくると、公称表示というのは地元がずっと使ってきたという実情を配慮した結果なのでしょうね。
特に、同じ場所を表現する公称表示が何通りかあるなんて他の都市ではあり得ないのではないでしょうか。

また、仁丹町名表示板は公称をひたすら尊重していると度々述べていますが、どう説明したらよいのか分からない不可解な表示板も実のところ、数は極めて少ないものの存在しています。
それらについては、またの機会に紹介させていただき、みんなで謎解きをしてみたいと考えています。

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