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2013年02月25日

東山線通の謎 3/3 ~仁丹町名表示板に見る近代史~

結局のところ・・・

「東山線通」なる仁丹町名表示板が見られた界隈を少し探索してみました。
すると次のような興味深いものを見つけることができました。

先ずは初代徳成橋の欄干の一部のようです。

東山線通の謎 3/3 ~仁丹町名表示板に見る近代史~

東山線通の謎 3/3 ~仁丹町名表示板に見る近代史~

大正2年5月竣工とありますので、ずばり市電東山線が疏水を越えた時点と一致しています。

そして、満足稲荷神社にも次のような鳥居がありました。
市電が神社の前を走り出して8カ月後、大正2年11月の建立です。

東山線通の謎 3/3 ~仁丹町名表示板に見る近代史~


鳥居は市電の開通と直接関係するものではありませんが、地域の方々の気持ちの盛り上がりが見えてきそうです。東寺町通拡幅で立ち退かれた方は複雑な心境だったでしょうが、地域全体としては東山通と市電東山線の開通は好意的に受け止められていたのではないでしょうか。

※  ※  ※


ところで、「東山線通」なる表現は、仁丹町名表示板では確認できましたが、実際のところ住所の表現として使用されてきた実績はあったのでしょうか?

そこで、思いついたのが当時の電話帳です。大正8年の電話帳を見てみました。
すると、次のような発見がありました。

東山線通の謎 3/3 ~仁丹町名表示板に見る近代史~
~京都中央電話局発行「京都電話番号簿 大正8年6月改」より~

今回話題にしたエリアでは、
   東山線通三條上ル一丁目
   東山通仁王門下ル
があり、「東山線通」と「東山通」なる表現が混在しています。
また、他のエリアにおいても、
   東山線通古門前上ル
   東山通松原上ル
などと混在はしているものの旧小堀通界隈でも新たに「東山線通」を使っていたケースも発見できました。      

電話帳を1枚めくりで全ページを調べたわけではなく、統計的にどうだったのかまでは言えないのですが、確かに「東山線通」なる表現が使われていたのは事実だったようです。

※  ※  ※


公称表示に頑なな仁丹町名表示板に「東山線通」と記されていると短期間でも公称としての時期があったのかと考えてしまいますが、今のところそのような記録に接することはできず、電話帳のデータからしても、どうやらエリア限定の、しかもその内の一部の人が使っていた通称だったと考えるのが自然なようです。
新たな南北の通りが出現し、それが東山通と命名されたとしても、認知度としては市電東山線の通りといった方が伝えやすかったのかもしれません

市電開通を知らせる京都日出新聞が”三条大橋東四丁目”と表現するように、それまでは東山通が存在しなかったわけですから、現在のような東山三条などと表現できなかったわけです。
ちなみに、大正10年になってからの新聞記事でも、事件現場を伝えるのに”仁王門東山線”としているものもありました。


加茂川を”加茂川筋”と、白川を”白川筋”と通り名に見立てるような表現に似ており、東山線を一種のランドマーク的な捉え方をしていたものと考えられます。


以上、大変長くなりましたが、結局のところ何の解決にも至りませんでした。

そして、
  ・公称を守る仁丹がなぜ「東山線通」なる表現を受け入れたのか
  ・なぜ「東山線通」なる仁丹はいずれも商標が上のタイプなのか
  ・「東山通」なる琺瑯仁丹は1枚も存在しなかったのか
  ・木製仁丹がもしあったのなら、東山線通、東山通、どちらの表現か

というような疑問は、何一つ解説しないまま、謎は謎のまま継続課題となって残りました。


京都仁丹樂會 shimo-chan




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Posted by 京都仁丹樂會 at 23:19│Comments(0)仁丹に見る近代史
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